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2011年10月23日 (日)

福島のスケッチ

先々週だったか、福島方面に娘と旅行したのにはワケがある。
この時期わざわざそんなところに子供連れてくなんてと言われたけれど、テレビや親同士の会話なんかで無意識裏に刷り込まれているであろう福島という土地に対する負の先入観を今のうちに変えておいてほしかったから。
そして、もちろん僕自身の先入観も。

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当たり前だけれど福島では福島ナンバーの自動車があふれ、ここと同じように渋滞し、休日のためか店舗には人があふれかえっていた。
車のナンバーをずっと気にしていたけれど、やはり福島ナンバー以外の乗用車を見ることは非常にまれだった。

昼間見た田んぼの稲はあらかた刈り取られていたけれど、収穫した米が世の中に流通できるものかどうか、それは僕にはよく分からない。できたとしても、去年までと同じように市場に歓迎されるかどうか。
ただ、おそらくはこのなんとも屈託のない美しい土地に、すでにいくばくかの汚染物質は静かに沈着して
いるのだろうとの想像が運転疲れのぼんやりとした頭をめぐる。

さすがに浜通りまでは足をのばさなかったけれど、会津のおしゃれなイタリアンレストランでは自慢の福島牛を使用したメニューが堂々と並べられていて頼もしかったし、隣に座った若いカップルは仕事上の他愛ない話を延々と繰り広げていた。
ここでは「日常」を謳歌する素敵な雰囲気がごく自然に漂っているのを感じた。

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宿泊地のペンションのオーナーとも二言三言話をしたけれど、お互いに気兼ねがあるせいか原発事故に関する話題はいっさい出なかった。オーナー夫婦がどういう思いで今も、そしてこれからもこの福島という土地で宿泊施設を経営されてゆくのか、興味がなかったわけではないのだけれど。 

次の日は朝から裏磐梯の五色沼を観光した。福島県の観光地だ、閑古鳥が鳴くかと思われたがあにはからんや、駐車場は車でいっぱい。お年寄りから子どもまで、たくさんの人で溢れていた。
ものすごく嬉しかったし、それはきっとそこにいる誰しもそうだったろう。行きかう人たちとこんにちはを言い合った。

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みんな大地震や原発事故などなかったのだというように湖水のまわりを散策し、カメラを構え、子どもらの嬌声が遠くのほうからこだましてくる。おそらく震災前とまったく変わらぬ風景がそこにはあった。

おそらく、よその国の人からしたら「Fukushima」で今こんなふうにのんびりとした風景が奏でられているのだと信じることは難しいかもしれない。
いや、かく言う自分だってそうだった。

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甚大な被害をもたらした今回の原発の放射能漏れ事故によって福島を離れた人たちが大ぜいいることは聞いているし、それに対して非難がましいことを言える筋合いではまったくないし、僕だってできれば特に子どもたちにはできるだけ安全な場所に避難してくれるに越したことはないと思う。
でもだからといって、その土地にとどまる人たちの重い決断を、軽々に論じたてることは厳に慎むべきだということをすごく感じた。たった2日間の旅だったけれど。

娘は、「ここって福島だよねぇ」と少し不安そうではあったけれど、ほとんど素通りするだけのようなこの土地に、おまえと同じくらいの年ごろの子たちが現に大ぜい暮らしているのだし、そういう場所や人たちに対してほんの少しでも偏見を抱いてはいけないよ、と諭すと静かにうなずいていた。

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ひっきりなしにおしゃべりする娘に、「しーっ・・・」。
すると、今まで饒舌だったまわりの景色が一斉に静まり、
ぞわ、と風が吹いて何かが鳥のようにいっせいに飛び立った。
背筋が寒くなった


放射能は確かに怖い。目に見えないという点が余計に恐怖心をかき立てもする。
でも、人間どうしがそれを真ん中にして差別したり卑屈になったりする、そのほうがもっと怖いし、いやだ。
僕らはもっと福島に対して自然に手を差し伸べるべきだし、福島の人たちも自分たちのおかれた立場や苦しみ、あるいは何気ない楽しみや喜びを別の場所に住む人たちに発信し続けてほしいのです。

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うーむ。実際はもっといろんなことを感じたのだったけれど。なんだろう、この隔靴掻痒感。
この件を記事にするにあたり、実際その場で感じたことの半分も文字にすることができないもどかしさをすごく感ます。

ではでは、またまた

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本日の一枚

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その五色沼の散策路にて。
リンゴドクガ、文一の『イモムシハンドブック』の表紙のケムシ。
なんという色彩、ほとんど戦国時代のバサラ者に匹敵する傾(かぶ)
きよう。

娘が見つけた。くやしかった。

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コメント

はじめまして。戸田のブログ村から来ました。

この状況の中、我が故郷、会津へ足を運んでくださり、美しい写真とともに紹介していただいて大変うれしく思います。
ありがとうございます。

福島、そして日本が日々放射能で浸食されていくのを考えるとやりきれない思いでいっぱいです。

投稿: えんどう | 2011年10月26日 (水) 11:03

えんどうさん コメントありがとうございます。

まさかブログ村から来ていただけるなんて思ってもなかったのでうれしいです。
会津のご出身なのでしょうか、昨今の情勢にはほんと心が痛みます。

何しろそこに住んでいらっしゃる方々が一日でも早く安心して暮らせるようにと願わずにはいられません。
なんとか早く収束してほしいものですね。

ところで歯医者さんでらっしゃるようで、しかも職場からすぐそば(笑)。
自分も歯がガタガタなのでそのうちご相談にうかがうかもしれません。
その節は何とぞよろしくお願いいたします!

ではでは

投稿: Fu | 2011年10月26日 (水) 21:57

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