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2010年11月25日 (木)

夭折のシンガーの系譜 : 反時流的・独善的音楽レビュー その1

めずらしく、音楽評のようなものでも、ひとつ。

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秋もだいぶ深まってきて、空気も澄んできたためだろうか、
夜、月がとってもきれいですね。

そんな近ごろの月を眺めていてふと想い出した一曲。

Jeff Hanson / Hiding Behind the Moon (2003)。

そうか、もう7年も前になるのか。
そういえばもうずいぶん前から、きれいな月を眺めるたびに口ずさんできたように思う。


(注・映像は本曲とは何の関連もありません)

どこか儚くて、ふわふわ漂うような繊細な歌声。

初めてこの曲を聴いてからしばらくは、ずっと女の人だとばかり思ってた。
でもまてよ、ジェフなんて女の名前、ないか。
と思って調べたら、1978年生まれの、レッキとした男性シンガーだった。

ただの気のよさそうな小太りお兄さんの写真が出てきたので、もっとビックリ。
しかし、こんなに澄んだ(まさしく少女のような !)歌声の男性シンガー、ほかにいるだろうか。

ちょうどこの曲が出た年に6枚のアルバムを残しただけで惜しくも亡くなった(自殺or他殺 !?)
エリオット・スミスさんとか、その辺りが好きな人にはたまらないんじゃないでしょうか。

その、エリオット・スミス

Say Yes / Elliott Smith (1997)。

その無骨な外見の影に潜む、ヒリヒリするような異常な過敏さ。
フッと息を吹きかけただけで血の滲む肌のような、静かな凶暴性。
ギュッと心臓をひと握りされるような・・・。
いや、意味のない比喩はやめて、彼の音楽にじっと耳を傾けよう。

ただ、この「Say Yes」(もちろんチャゲ・アスの同名曲だって大好きですが)、
彼の中では例外的に希望に満ちた(これでも !)淡い光の音楽。

自殺か事故か、といえばもう一人。
イギリスのシンガーソングライター、ニック・ドレイクさん。
この人はやはり異常に内容の濃ゆいアルバムを3枚残しただけで
商業的な成功を享受することなくこの世を去った人。
1974年だからもうずいぶん前だけど、26歳の若さだった。

Day is Done / Nick Drake (1969)。

奇しくもこの曲が発表された1969年は、エリオット・スミスさんの生まれた年でもある。

なんとも厭世的な気分にさせられるのがこの三人のシンガーの共通点。
聴いてると落ち込むんだけど、だからこそ何度も戻ってくる。
浮き世のわずらわしさ (This Mortal Coil) からの緩やかな離脱。
媚薬、というよりむしろあからさまに麻薬的な音楽たち。

こういう人たちに向き合いたくなるっていうのは、
精神的、肉体的にダウナーな方へ向かっている時なんじゃないかな、
だから、そういう意味では(僕にとっては)とっても厄介な音楽だともいえる。
聴きたいのに、同時に遠ざけておきたいような。

この記事書くついでに調べたところ、信じられない記事が目に飛び込んできた。
なんと、冒頭に紹介したジェフ・ハンソンさんも去年、
31歳の若さでお亡くなりになっている、と。

絶句。


まさか、あのエリオットより若く、月の影に隠れてしまうことになるなんて・・・
しかも、ニック・ドレイクさん同様たった3通の置き手紙をこの世に残しただけで。

(3人とも自宅の自分の部屋で亡くなっている、というのも奇妙な符合だ。
 もちろん彼らの系譜に、あのカート・コバーンを加えたってかまわない)。

この三人の源流といっていいだろうニール・ヤングさんやヴァン・モリソンさんたちが
(お二人とも1945年の生まれだから、現在65歳か ?)、
いまだに意気軒昂なのが、救いといえば言える、皮肉ですが。

Hiding Behind the Moon、毎年月がきれいな頃、必ず思い出す僕の大切な曲です。

ではでは、またまた

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Hiding Behind the Moon が収録されたアルバム

サン サン

アーティスト:ジェフ・ハンソン
販売元:7e.p.
発売日:2003/01/21
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